欧州右派ポピュリスト革命

ナチスの犯罪を矮小化する政党の躍進がとまらない
熊谷 徹 2026.05.27
誰でも

 欧州では、右派ポピュリスト政党の躍進が止まらない。今年2月にドイツで行われた連邦議会選挙では、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が得票率を前回の選挙の2倍に増やして第2党になった。

 去年9月2日にドイツの世論調査機関フォルサが公表した政党支持率調査によると、AfDの支持率は26%で首位だった。メルツ首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は25%で2位に甘んじた。

 旧東ドイツでは、AfDの人気はさらに高い。今年9月にはザクセン・アンハルト州で州議会選挙が実施される。世論調査機関インフラテスト・ディマップが9月4日に公表した政党支持率調査によると、同州でAfDの支持率は39%でトップ。2位のCDU(27%)に12ポイントの差をつけた。AfDの州首相候補は、米国の映画俳優に似たウルリッヒ・ジーグムント氏。彼のティクトクのサイトのフォロワーは50万人を超える。

 ドイツの論壇では、「AfDはもはや抗議政党ではない。低所得層や労働者だけではなく、中所得層もAfDを支持している。最も大きな理由は、過去の難民政策に対する不満だ」という意見が強い。その理由は、市民の心を苛む、生活水準の悪化や、転落についての不安感だ。ザクセン・アンハルト州での世論調査では、「将来に不安はない」と答えた回答者はわずか20%だった。回答者の71%が、この州の将来に不安があると答えた。

筆者の著書「排外主義と闘うドイツ」(高文研)は6月1日に発売です。

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 ドイツの大半の市民は、AfDについて批判的だ。だが変化の兆しも見える。9月5日は、ドイツの高級日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)」が、初めて社説の中でAfDに迎合的な姿勢を示した日として、記憶されるだろう。

 FAZは、「右派ポピュリズム政党は米国、日本、欧州で抗議政党ではなく、世界観になりつつある。根底にあるのは、グローバル化に対する反感だ。右派ポピュリストは、グローバル経済を否定し、社会を1950年~1960年代に戻そうとしている」と指摘した。

 ドイツの社会民主党(SPD)は、連邦憲法裁判所にAfDの禁止を申請しようとしている。だがFAZは、「司法的手段でこの政党を止めることはできない。裁判所も世界観を禁止することはできない。右派ポピュリズムは、革命だ」と述べている。

 私が気になったのは、FAZの社説の中で、AfDの一部の幹部がナチスの犯罪を矮小化したり、移民系市民に対して差別的な発言を行ったりしたことが全く触れられていないことだ。

 これでは、AfDとCDU・CSUの連立という可能性が将来浮上しても、おかしくはない。

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